2020.07.23ベトナムM&Aの基礎知識とその事例
近年ベトナムでは経済的な成長が著しく発展しており、日本企業を含め海外の企業の多くがベトナムに進出してきています。
ベトナムで事業を拡大するのは非常に難しく、人材確保や育成などの面で悩まされる企業も少なくありません。
そこで注目を集めているのがベトナムでのM&Aで、M&Aを行う事で現地法人のノウハウを活かし、事業展開をスムーズに行えたり、非常に優秀な人材の確保を行うことが可能です。
そこで本記事では、ベトナムにおけるM&Aの基礎知識と、これまでにM&Aが行われた事例をご紹介します。
ベトナムのM&Aとは?
ベトナムにおけるM&Aは基本的には国内間のM&Aの仕組みと同じで、ベトナムにある企業を買収・合併・資本業務提携を行う事で、ベトナムに事業展開することができます。
ベトナムでは近年、政府が国有企業の民営化を行っており、今後数々の優良企業が民営化されることが予測されます。
そこで、今後ベトナムでのM&Aがさらに活発するであろうと言われています。
他にもベトナムでM&Aを行うメリットはあり、以下の通りです。
早く事業を開始できる 日本ベトナム間のM&A取引関係が良好 将来性が非常に高い インフラの改善
メリット
早く事業を開始できる
まず、M&Aの醍醐味と言っていい事業展開を早く行うことができます。
一般的にベトナムで法人設立するとなると、数ヶ月で完了できますが、オフィスの確保、人材の確保・育成など、日本の環境とは大きく異なるベトナムで事業展開するのは、非常にリスクが高く、費やす時間も多いです。
実際に、ベトナムで事業を開始しようとしたが、上手く人材育成ができずに撤退する事例も数多くあります。
ベトナムでは、経済成長が著しいので、競合他社にマーケットを抑えられるリスクがあるので、事業展開をスピーディーに行う必要があります。
そこでM&Aを行う事で、それらに費やす時間やコストを削減できるので、すぐに事業展開が可能です。
日本ベトナム間のM&A取引関係が良好
親日国で有名なベトナムですが、その背景にはベトナム政府が日本の企業や投資家などの活動を促進するために、非常に有効な関係を築いてきたからです。
2003年には、日越投資協定が締結されるなどして、他の国と比べてもベトナムでM&Aを行う環境は比較的整っていると言えます。
将来性が非常に高い
2018年のベトナムの実質GDP成長率が7.1%と過去最も高い成長率を記録しており、過去5年間の成長率の平均値も6.59%と非常に成長が著しいです。
また、ベトナムの人口は9,600万人と非常に多く、その中でも20~30歳の若い優秀な人材が非常に多いので、将来的にも生産年齢人口が増加傾向になることが分かります。
さらに、近年は外資投資が加速しており、アジア経済共同体の発足やTPPへの加盟を行っており、今後は海外の企業からの投資が増加することが予測されています。
インフラの改善
ベトナムの経済成長に伴い、インフラの整備が急ピッチで進められています。
日本の企業もベトナムのインフラ整備に協力しており、2021年に開通予定のホー・チ・ミンのメトロ(地下鉄)も現在建設中です。
都市部だけでなく、地方への道路整備も活発に行われており、インフラが整うことで、ベトナム全土に事業展開やアプローチをすることが可能になります。
ベトナムのM&A事例
日本を含める外資系の企業がベトナムでM&Aを実施するケースは年々増えてきており、大規模な取引から、中小企業間の小規模な取引まで幅広く行われています。
そこで、有名な日系企業がベトナムでM&Aを行って事例をいくつかご紹介します。
三菱東京UFJ銀行がVietinbankの20%を買収(過去最高) NTT データ ItaliaがIFI Solution Joint Stock Companyを買収 キリンホールディングス株式会社がインターフード社を買収 ユニ・チャームがダイアナ社を買収 三井住友銀行がエグジムバンクを買収
三菱東京UFJ銀行がVietinbankをM&A
まず一つ目のM&Aの事例として、過去最高の取引額でもある、三菱東京UFJ銀行がVietinbankの20%を買収した事例があります。
Vietinbankは現在ベトナムで3番目に規模の大きい銀行であり、ベトナムに進出してくる日本企業の経済活動もサポートしています。
三菱東京UFJ銀行がVietinbankをM&Aしたことにより、マーケットの情報や金融商品の情報を、日本の銀行や企業に積極的に提供を行っています。
NTT データ ItaliaがIFI Solution Joint Stock CompanyをM&A
日本のIT企業である、NTTデータの子会社である、NTTデータ ItaliaはベトナムのIT企業である、IFI Solution Joint Stock Companyを発行株式の100%を買収しました。
IFI Solution Joint Stock Companyは主に、欧州向けにオフショア開発を行なっており、ソフトウェアや通信技術をもともと提供していました。
この買収により、NTTデータはIFI Solution Joint Stock Companyの高度なITノウハウと、優秀で豊富な経験を持つ人材を確保することが出来ました。
キリンホールディングス株式会社がインターフード社をM&A
日本の大手飲料メーカーである、キリン株式会社はベトナムの清涼飲料中堅メーカー、インターフード発行済み株式の57.25%を買い取りました。
インターフード社はベトナム国内にて、小売店やスーパーマーケットなど11万店以上の非常に大きな流通ネットワークを持っており、果実飲料や茶系飲料など複数のブランドを持っています。
ベトナムでは、生産年齢人口が増加しているため、清涼飲料のシェアが拡大傾向にあるため、キリン株式会社はベトナムでの商品流通に力を入れています。
ユニ・チャームがダイアナ社をM&A
日本の大手幼児用製品メーカーである、ユニ・チャームがベトナムの首都ハノイにある、幼児用おむつや生理用品メーカーのダイアナ社を発行株式の95%を買い取りました。
ユニ・チャームはアジアでの幼児用おむつや生理用品のシェア率は1位ですが、唯一ベトナムではアメリカのメーカーに市場を抑えられている状態でした。
そこで、ベトナムでの販売ルートが多くあるダイアナ社を買収することにより、ベトナムでもシェア1位を目指す方針です。
三井住友銀行がエグジムバンクをM&A
日本の大手銀行三井住友銀行は、ベトナムの銀行であるベトナム・エクスポート・インポート・コマーシャル・ジョイント・ストック・バンク(エグジムバンク)を15%の出資を行い、筆頭株主となりました。
買収金額は、約225億ドルとなっています。
三井住友銀行は、ベトナムの金融市場において、ベトナムに進出した日系企業の金融サポートの強化を行う事で、同国における新しいビジネスチャンスを獲得することを目指しています。
具体的には、消費者ローンやクレジットカードの協働を実施しています。
まとめ
ベトナムでのM&Aは非常に魅力のある手段であり、日本の大企業も数多くベトナムという将来性の高い国へ進出を行なっています。
M&Aの重要な点として、両国の企業が互いにwinwinの関係性を作ることが非常に重要になってきます。
本記事でご紹介した事例を参考に、M&A戦略について、考えてみてはいかがでしょうか。